出典:西日本新聞より
0対183 で負けても挑み続けるチーム
下記の記事を見かけた。私も以前、ラグビーのチームをトレーナー、トレーニングコーチとしてサポートしていた経験があり、この県の強豪校は認識している。
0対183で負けても・・・ラグビー強豪校に挑む部員たちの闘争
西日本新聞より話題になっている鳥栖工業ラグビー部は、2020年1月の新人戦の決勝戦にて佐賀工業高校ラグビー部に圧倒され0対183で敗戦。その後、新型コロナウイルス感染症の影響で、高校総体は中止となったが代替大会が決まった。
この代替大会にて、6月21日(日)11:00 @佐賀工業高校運動場にて佐賀工業高校ラグビー部との対決が決定している。
決勝戦で0対183!?
気になった方も多いと思うが、決勝戦で0対183という試合になるのにはいろいろな背景がある。ラグビーはトライで5点、その後のキックが入ればさらに2点が加算される。それが全て決まったとしても、25回以上のトライ&キックが成功しないとこの点差にはならない。
下記に少しまとめてみたが、日本ではラグビー界以外にも当てはまることもあるだろう。
- 現在佐賀県には大会に出場するラグビー部が2校のみ
- 佐賀工ラグビー部は全国でも強豪校(38年連続出場中)
全国高等学校体育連盟 ラグビー専門部公式サイトより
五郎丸歩選手の出身校と言うとわかる人もいるだろうか。元日本代表である。 - 鳥栖工業高校ラグビー部は初心者が多い
部員39人中、高校からの初心者は33人。
【環境面】
ラグビー人口が、少なくとも佐賀県では高校生世代で減少している可能性が高い。高校の部活動が減っているなら、当然ラグビーに関わる環境も減っている可能性も高いだろう。
上記の記事には過去の戦いについても少し紹介されていた。
- 過去には220点を取られて敗戦したこともある
- 1988年の県大会決勝後に敗戦した鳥栖工の監督が胴上げされる
この年は9対28で例年に比べると善戦をしたようだ。当時の監督である友清正晴さんが部員から試合後に胴上げをされた。この時、友清監督は『50点差以内なら御の字』と思っていたようだ。当時の選手はその想像を超えた。
ちなみに、当時は県大会に6校が出場していたが、佐賀農業と佐賀東が姿を消し、2017年には大会自体に出場したのは佐賀工と鳥栖工のみとなる。2019年には佐賀西が休部となり、部員が2名いた龍谷も合同チームで出ることも不可能となり2020年度から活動を休止している。
そんな中、鳥栖工業高校ラグビー部は先ほど上げたように、初心者を中心に39人の部員を集め、佐賀工業に毎年挑んでは跳ね返され、を繰り返している。
初心者の中学の部活はパソコン部、卓球部、野球部、無所属(帰宅部)などだそうだ。
この春の取り組み(0対183で敗北した後…)
ラグビーに詳しい人はご存知かと思うが、ラグビーは秋以降にシーズンが本格化する。いわゆる『花園(全国高等学校ラグビーフットボール大会)』に向けてのシーズンが始まるからだ。しかし、鳥栖工業高校ラグビー部は「春」に正念場があるそうだ。
姿消えゆくラグビー部・・・県内には2校のみ なぜ鳥栖工は残るのか
西日本新聞よりこの記事にもあるし、先ほど上げてもわかると思うが新入部員の勧誘があるからだ。部員が多いのは部の活気にも繋がる。ましてやラグビーはどうしてもケガも多くなるスポーツだ。ギリギリの人数ではかなり厳しい。
ましてや、打倒とする佐賀工業高校ラグビー部は全国レベルのチーム。
新入部員をゲットするために行ったこと
- 作戦会議(入学式1週間前)にて目標は15人獲得!
・威圧感を与えないように勧誘は少人数で
・体験入部をしてくれた新入生は校門まで送る - げた箱で靴を履く新入生に、昼休みに、中学の後輩に声をかけまくる
まさにローラー作戦!
など、だそうだ。ちなみに昨シーズンの3年生は4人。結果として獲得した新入部員は12人でうち経験者は3人。大半の生徒は『何かに惹かれて』入部を決めたようだ。
そのうちの1名は、中学時代に帰宅部。ワールドカップ日本大会もほぼ見ていない。『先輩が親しみやすく、キックしている姿がかっこ良かった』そうだ。
なぜ、鳥栖工業高校ラグビー部は残るのか
ちなみに、今年はこの勧誘シーズン後に1人部員が増えたそうだ。2年生が。昨年9月に辞めたが、部員たちに声を掛けられ続けたことがきっかけだったようだ。
彼は、現在監督である徳永元紀さんにこう話したそうだ。
また仲間とラグビーがしたい
徳永監督の前、昨季まで9年間、監督を務めた水野貴人さんはこう考えてきたと書いてある。
仲間意識が強いラグビーの良さを伝えることで人は集まる
伝統として、培われてきた『仲間意識』や『居心地の良さ』が歴代の監督や選手に伝わってきたからこそのことなのだろう。
- 創部:1947年
- 毎年1月3日に若者から年配者までOBが集結
現役と試合 → 新年会
この『繋がり』が、現役の選手たちにも活かされているそうだ。それが『トレーニングルーム』。前監督の水野さんが校舎内の一部にトレーニング機器を入れ始め、OBや保護者たちの資金協力を得て年々器具も増えているとのこと。
試合は言うほど甘くない
この『繋がり』で作られたトレーニングルームで身体を鍛え、毎年初心者として入学してくる1年生たちは先輩の身体つきや取り組む姿を見て、先輩たちを尊敬の眼差しで見るだろう。
その先輩たちは毎年6月、打倒とする佐賀工業高校ラグビー部に完膚なきまでに打ち砕かれるのだ。あのかっこいい先輩たちが・・・。
大差での敗北を目の当たりにして、『次は自分だ』と強者に立ち向かう者になれるかどうか。これを繰り返しながら、鳥栖工業高校ラグビー部は今年も全国レベルの目標のチームに立ち向かっていく。
試合は6月21日(日)11:00 KICK OFF @佐賀工業高校運動場だ!
残念ながら、現地観戦は新型コロナウイルス感染症の影響で保護者と学校関係者に限られている。このようなチームの戦いぶりはまさに生で見ることで伝わるものがあると思うが、結果だけでも気にしてみてはどうだろうか。